#02 電力系統の慣性サポート

太陽光発電や風力発電などの分散電源は,パワーエレクトロニクス機器であるインバータ(直流/交流変換器)を介して電力系統に連系されます。これらの分散電源は現在の電力系統の主力である同期発電機と異なり,周波数が変動しにくい特性「慣性」がありません。そのため,インバータ連系型の分散電源が大量導入され電力系統における比率が高まると,系統の慣性が不足し周波数の変動が大きくなることが懸念されています。実際にオーストラリアでは2016年9月に系統の慣性不足が原因とされる大停電が発生しており,日本でも季節によっては,ある電力会社管内の発電量の8割が太陽光発電に由来するものであるような状況になっています。

 この解決策のひとつとして優れた制御特性をもつインバータを,同期発電機のように振る舞うように制御する「仮想同期発電機(Virtual Synchronous Generator,VSG)制御」が提案されています。インバータにエネルギー蓄積要素を付加し,同期発電機の運動方程式(動揺方程式)を満足するように動作させることによって,慣性をもたせることができるのです。現在では,発電を行う分散電源だけでなく,インバータで制御される負荷にもVSG制御を適用する研究も行われるようになってきました。

 私たちの研究室でも,VSG制御の応用について研究を行ってまいります。


仮想同期発電機(VSG)制御の構成

同期機の動揺方程式

VSG制御された分散電源が連系された電力系統

人気の投稿